コラム

【注意点】所得税における資産取得時の借入金利息の取扱い

購入した減価償却資産の取得価額には、原則として、その資産の購入代価とその資産を事業の用に供するために直接要した費用が含まれます。

また、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などその資産の購入のために要した費用も含まれます。

今回はその中でも特に借入金利息の取扱いに対してピンポイントで見ていきます。

所得税法上の取扱い

1.原則

業務を営んでいる者が業務用資産の取得のために借り入れた資金の借入金利息については、所得税法上、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入します。

ただし、当該資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額ついては、当該資産の取得価額に算入できます。

2.新たに業務を開始する場合の取扱いの特例

既に業務を営んでいる者が業務用資産の取得のために借り入れた資金の借入金利息についての取扱いは上記の通りですが、新たに業務を開始する者が業務用資産の取得のために要した借入金利息については以下の通り異なる取扱いとなるため留意が必要です。

新たな業務を開始する場合(不動産所得、事業所得、山林所得、又は雑所得を生ずべき業務を新たに開始する場合)に当該業務の開始前に、当該業務用の用に使用する資産の取得のために、借入を行っている際の借入金利息については、当該業務を開始する前の期間に対応するものは当該資産の取得価額に算入が必要です。

法人税法上の取扱い

業務用資産の取得のために要した借入金利息については、法人税法上はその資産の使用を開始するまでの期間に係る借入金利息は当該資産の取得原価に算入することが原則ではあるものの、取得価額に算入しないことも認められています。つまり、法人の任意で選択ができます。

そして、その資産の使用を開始するまでの期間に係る借入金利息は期間の経過に応じて損金の額に算入します。

まとめ

上記を表にまとめると以下の通りです。

税目業務の開始前業務の開始後
所得税 (既に業務を行っている場合)必要経費算入 (取得価額算入も可)必要経費算入
所得税 (新たに業務を開始する場合)取得価額算入必要経費算入
法人税取得価額算入 (損金算入も可)損金算入

上記の通り、当該資産の使用開始前については、所得税法上は原則経費算入、法人税法上は原則取得価額算入になるものの、所得税法上は取得価額算入、法人税法上は損金算入が認められていることから、実質的には同じ取扱いです。

ただし、新たに業務を開始する場合で当該業務の開始前に当該業務用の用に使用する資産の取得のために借入を行っている際の借入金利息については、所得税法上、当該業務を開始する前の期間に対応するものは当該資産の取得価額に算入する点を留意してください。