コラム

節税目的の養子縁組

4年以上前の事案ですが、相続税の節税を目的とした養子縁組の有効性が認められるか否かについて、最高裁で「有効性を認める」との判決が出ました。

経緯等を含めて説明していきます。

裁判に至った経緯

被相続人が亡くなる前

被相続人(亡くなった方)の長男が、被相続人に対して税理士を伴って、長男の息子(被相続人から見た孫)を、養子縁組によって被相続人の息子とするよう勧めていたようです。

結果、長男の息子は長男の父親の子供となりました。

長男の息子が養子縁組で被相続人の子供になった後

被相続人が亡くなった後、被相続人の長女と次女から養子縁組について訴えが起こりました。おそらく、財産分与について、養子縁組をした長男の息子にも相続財産を分け与えることに納得できず、養子縁組の無効を主張したのだと考えられます。

結果は冒頭に述べた通りです。最高裁では例え養子縁組の目的が相続税の節税であっても、その養子縁組は有効であるとの判断を下しました。

相続の前に養子縁組を行った場合のメリットとデメリット

メリット

1. 相続税の基礎控除(非課税枠)の拡大

相続税の基礎控除(非課税枠)は、以下の算式により算定します。

3,000万円+600万円×相続人の数

養子をすることで相続人の数が増えるため、非課税枠が広がります。

なお、相続税法では、実子がいない場合には2人まで、実子がいる場合には1人までの養子が認められます。

2. 生命保険の非課税枠の拡大

相続人一人につき500万円までの非課税枠があるため、養子1人増えることで500万円分非課税枠が広がります。

3. 死亡退職金の非課税枠の拡大

生命保険の場合と同様、500万円分の非課税枠が広がります。

4. 普通養子縁組の場合、子は実の親と養親の両方の相続権がある

今回の裁判のケースで言えば、長男の息子は養子縁組により祖父母から財産を相続する権利が発生しますし、長男夫婦から財産を相続する権利も失われません。

デメリット

1. 遺産分割協議がまとまらず、争いの火種に

今回の裁判がそうであったように、孫を養子とすることで節税することができても、心情的にしこりが残る可能性はあります。

2. 相続税の額が2割加算される

孫を養子縁組により子とした場合、相続税額が2割加算されます。

本日紹介の最高裁の判決により、相続税対策のための養子縁組は認められました。しかしながら、兄弟間の揉め事の原因にもなり得ます。

相続はそうでなくとも揉めやすいものです。養子縁組が節税につながることもありますが、肉親で揉め事を起こさないようにするのも大切だと考えます。