コラム

所得税と相続税から考える祝儀、見舞金、香典

結婚式の祝儀、入院時の見舞金、人が亡くなってしまった際の香典等、税務署へ申告していない方は多いのではないでしょうか。

実はこういった類のものにも税務上の取扱いは存在します。

香典を受け取った際の確定申告

香典を受け取った際の所得税の取扱いは所得税基本通達9-23で以下の通りとなっています。

葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、令第30条の規定により課税しないものとする。

一般的な常識の範囲内の香典であれば、所得税は非課税ということです。確定申告の必要はありません。

結婚式でもらったお祝い金や入院した時のお見舞金も同様です。常識的な金額の範囲内であれば、所得税は課税されません。

一般的な上記の範囲を超えてしまった場合は、一時所得として取り扱うのが妥当だと考えられます。

香典を支払った際の税務上の取扱い

1.役員や従業員に支払った場合

役員や従業員に支払った祝い金、香典、見舞金は、慶弔見舞金規程などの一定の基準に従って支給していれば、福利厚生費として処理します。

慶弔見舞金規程での支給額の役員と従業員の較差については、社会通念上問題のない水準であれば問題ありません。

2.得意先や仕入れ先等の事業関係者に支払った場合

会社が得意先や仕入先などの事業関係者に対して支払った祝い金、香典、見舞金は、交際費として処理します。

3.社長の友人や親戚で事業に関係のない方に支払った場合

社長がその友人や親戚で事業に関係のない方に支払った祝い金、香典、見舞金は、その社長の個人的な支出になるため、社長に対する給与(役員賞与)として処理します。

このような役員賞与は、会社で負担することのないようにしましょう。

受け取った香典の相続税への影響

相続税は相続財産に対して課税されます。誰にでも課税されるというわけではなく、一定の財産を持っている方が課税されます。なお、相続税の申告義務は下記の場合に生じます。

1.葬式費用は相続税財産から控除できる

大切な方が亡くなった時の葬式費用は、結構多額にかかってしまうこともあり、相続税では課税対象となる相続財産の金額から、葬式費用を控除できます。

控除することが出来る葬式費用は以下の通りです。

・葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用)

・遺体や遺骨の回送にかかった費用

・葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えばお通夜などにかかった費用)

・葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用

・死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用

お寺などへの読経料などのお礼は、通常、領収書は発行されませんが、日付、金額、寺院の名称をメモする等することで、葬式費用に含めることが可能です。

これに対して次の費用は、葬式費用には該当しません。

・香典返しのためにかかった費用

・墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用

・初七日や法事などのためにかかった費用

2.香典をもらった際の相続税の取扱い

香典をもらうのは故人ではなく、あくまでも遺族です。香典は相続税の対象となる相続財産には該当しません。

香典返しの費用を葬式費用に含めてはいけません。葬儀社からの請求をすべて葬式費用としてしまうと、葬式費用が過大となってしまうので注意しましょう。