コラム

現金主義がよくない理由

起業した際に、まず経理について目を向けることになると思います。

とはいえ、「お金を受け取ったときと支払った時に記録をつけるだけ」というわけにはいきません。

税務上、現金主義は認められない

起業すると、個人事業主であれば、その事業から発生した利益に対して所得税が課税され、

法人であれば、その法人の事業から発生した利益に法人税が課税されます。

利益の計算上、売上として認識しなければいけないのは、お金をもらった時ではなく、お金をもらう権利が確定した時です。

12月に発生したサービスに対して1月に代金を受け取る行為を例に取った場合、お金の出入りのみで処理をする現金基準で以下の処理を行います。

(借)普通預金 xx (貸)売上 xx

現金主義の場合、通常、2本の会計処理が1本になるので処理は楽だと思います。

しかしながら、この会計処理を行って税務申告をすると、12月分の売上が申告漏れてなってしまい、追徴課税を受けます。

現金主義が採用できる場合

青色申告を行っている小規模事業者である個人事業主についてのみ、現金主義による所得計算が認められています。

現金主義を採用している場合には、青色申告特別控除が10万円となってしまいます。一定の要件を満たしている青色申告者であれば65万円の控除ができますので、その差は55万円です。

所得税の課税が最低税率の場合でも、82,500円の負担増です。(復興所得税は考慮外)

その他現金主義のデメリット

1.会社の業績管理できない

現金主義の場合、お金の授受で収益・費用を認識します。そのため、仕事をしたタイミングやサービスの提供を受けたタイミングとは異なります。

そのため、会社の業績を適切に管理できません。

2.債権及び債務が管理できない

売上や費用を発生したタイミングで処理した場合、その売上に関してちゃんと入金がなされているか、支払についてきちんと行われているか、会計データを見ることにより管理できます。

現金主義の場合、会計データで債権債務が管理できません。請求書を送ったにもかかわらず入金が未済であるものに気付かない可能性が生じます。

上記の1.も含めて、会計データでなく別管理するのであれば、その分手間が増えます。

3.売上総利益率が会計データで計算できない

商品の入庫や在庫が会計システムに入力されないため、原価率や売上総利益率が会計データからは把握できません。

そのため、価格設定が適切だったのか分からない、異常な減耗(盗難や紛失など)が発見できないといった可能性が生じます。

以上、現金主義について説明しました。未収代金の回収漏れは、貸倒れを引き起こしかねません。売上だけでも発生主義で計上することをおすすめいたします。