コラム

海外赴任時の確定申告

2020年10月現在、新型コロナウイルスの影響が世界中でいまだ続いているため、海外旅行はおろか海外赴任もままならない状態です。

新しい働き方としてリモートワーク等も採用されつつありますが、新型コロナウイルス終息後に海外赴任があった時のために海外赴任時の確定申告について説明します。

順を追って項目ごとに見ていきます。

海外赴任中の所得税について

1.日本に居住の場合、海外に居住の場合の原則

日本国内の会社で働いて給与を取得する場合は、給与に所得税が課税され、給与から天引きされる形で納税をしています。通常、サラリーマンの場合、源泉徴収されるため、所得税を気にすることはほとんどないかと思います。

1年以上の予定で海外支店に勤務した場合や、海外の子会社に出向した場合は、原則として日本の所得税は課税されません

そのため、海外赴任前に海外での勤務を開始する年の1月1日から出国日までに日本国内で得た給与について、源泉徴収された所得税を清算する必要があります。

清算方法は年末調整と同様の手順で勤務先の企業が行います。

2.海外赴任後も日本国内で所得が発生する場合

海外に転勤した後も日本国内で所得が生じる場合は、日本の所得税の課税対象です。

例として、海外赴任中に国内の自宅の貸付等を行った場合(いわゆる、リロケーションして得た)不動産所得等です。

しかしながら、海外赴任者は海外居住のため、確定申告手続きが難しくなります。

そこで、確定申告が必要な場合は、日本で代わりに所得申告書の提出や税金の納付等を行う納税管理人を選定しなければなりません。

納税管理人は法人でも個人でも構いませんが、海外赴任者の納税地を所轄する税務署長に、「所得税の納税管理人の届出書」を提出します。

海外赴任中の住民税について

住民税は原則としてその年の1月1日に住所があった地に前年1年間の収入を元に算出された税額を納付します。

そのため、途中で海外赴任した際も、その年度の住民税は全額支払わなければなりません

出国の翌年の1月1日をまたいで1年以上海外に居住する場合、その年度の住民税は課税されません

なお、ご参考となりますが、この規定は、退職金も変わりません。このことは、別の日のblogで取り上げたいと思います。

出国した年の住民税の納税分は、勤務先での最後の給与で一括徴収するかその後の給与で差し引くかのどちらかであれば、手続きの必要はありません。この場合の方が手続きが楽であるため、お勧めです。

自分で納税をする場合は、納税通知書を受け取り、代わりに納税してもらう納税管理人の選定が必要です。

住民税は1月1日の1日だけで判定されるため、住民票移動のタイミングにご注意ください。

海外赴任中の住宅ローン控除について

非居住者となった場合、住宅ローン控除は、赴任中は使えません。

帰国後に残存期間の控除を受けるためには、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出する必要があります。

以上が海外赴任時の確定申告についての簡単なまとめです。

慣れない海外赴任の対応をしながら確定申告を行うことは、電子申告や書類の郵送などで大変なこともあるかと思います。

また、申告書の不備などが発生した際も、対応には海外に居住しているという物理的な制約から苦労することもあるでしょう。

納税管理人の利用について、弊所に相談いただけると幸いです。