コラム

入社支度金の取扱い

会社が求職者の応募促進や内定者の辞退対策、入社に伴い転居等が必要な社員の援助の目的で入社支度金を支給する場合があります。

それぞれの税務上の取扱いを見ていきます。

入社時に一律支給される入社支度金

求職者の応募促進や内定者の辞退対策の効果を狙ってのものが該当します。

入社支度金という名の通り、この金銭の支払いは、「雇用契約」を前提としており、「労務の対価」としての性質を有していると考えられます。

一時的に受け取るものですが、一時所得には「労務の対価」としての性質を有するものは含まれないことから、入社支度金は一時所得には該当しません。

また、転居等に関係なく支給されるものですから、「転居費用として通常必要と認められる金額」に該当するかどうかも定かではないため、非課税所得にはなりえません。

そのため、支払われるのが入社前か入社後なのかによって以下の2つが考えられます。

1.入社前に支払われる

契約金という位置付けで雑所得とします。入社前であれば、労務の提供が行われる前ということですので、100万円以下の部分については10.21%、100万円を超える部分については20.42%の源泉徴収が必要です。

2.入社後に支払われる

賞与との位置付けで給与所得とします。入社後の場合は、すでに労務の提供が行われている状況にあり、賞与として給与所得に該当する可能性がありますので、実態に応じて判断します。

消費税については、一律支給される支度金は、「通常必要とされる部分の金額」とはいえず、実費弁済の性質を有していないことから、課税仕入れに該当しません。

ただし、他社の従業員を引き抜くためのいわゆる「引抜料」については、対価性を有するものとして、課税仕入れに該当します。

転居等が必要な場合に支給される入社支度金

入社に伴って転居等が必要な場合に支給される入社支度金については、その転居費用として通常必要と認められる部分の金額は、所得税法上、非課税です。

非課税となるわけですから、所得税の源泉徴収は不要です。

転勤となった従業員の転居費用と同様の取扱いになりますので、会社側の処理としては、旅費交通費として処理することになるでしょう。

消費税についても、実費相当額の支払いと同等ですので、課税仕入れとします。

以上、入社支度金における扱いの違いを説明しました。

税務の観点からすると、望ましい制度設計は、所得税非課税、消費税は課税仕入れに該当するケースのため、以下のいずれかが望ましいと考えられます。

1.転居等に必要な金額を実費弁済
2.社内規則により、転居による移動距離などの相場を考慮して支度金の支給額を決定(支給額は実費弁済相当額となるようにする)