コラム

遺族年金を受給しても入れる扶養と入れない扶養

現在年金を受給している世代では、男性が外で収入を得て、女性は専業主婦という形態も多かったのではないかと思います。

そのため、夫の年金収入としての厚生年金と企業年金から、一定以上の年金収入があるため、所得税が課されており、妻は国民年金の第三号被保険者として所得税が非課税(65歳以上の場合、158万円以下の年金収入)という世帯が多いようです。

この場合、妻は夫の控除対象配偶者として配偶者控除を受けます。

その後、その夫が亡くなった時、その妻は遺族年金を受け取ることができます。この時、その妻は息子や娘の扶養に入ることができるのか説明します。

所得税の取扱い

1.遺族年金は非課税

結論から申し上げますと遺族年金は非課税のため、もともと夫の控除対象配偶者であれば、一緒に暮らしている息子や娘の扶養親族になることが可能です。

所得税では、国民年金や厚生年金、企業年金の受給を受けた場合、

年金の受給額-公的年金等控除額

が雑所得して課税の対象となり、扶養親族になることができるかどうかの基準です。

遺族年金は所得税法上、非課税として取り扱われており、課税の対象にはなりません。

亡くなった方の収入によって生活をしていた方の生活を維持するために支給される性質のものであるからです。

2.夫の準確定申告で配偶者控除を受けた場合

通常、夫の控除対象配偶者であって、かつ、息子や娘の扶養親族にできません。しかしながら、その夫が亡くなった年に限り、夫の控除対象配偶者で、かつ、息子や娘の扶養親族になることが可能です。

夫が亡くなった時、その亡くなった日の翌日から4月以内に準確定申告をする必要があります。その準確定申告では、妻を控除対象配偶者にするかどうかは、死亡した時の現況によって判定しますので、その妻は控除対象配偶者として申告します。

一方、一緒に暮らしている息子や娘の扶養親族の判定は、その年の12月31日の現況によりますから、その息子や娘の扶養親族になることも可能です。

社会保険の取扱い

所得税と異なり、健康保険では遺族年金を収入に含めるため扶養に入れない可能性が生じます。

上記の際、健康保険の被扶養者とするための要件は、以下の2つを満たす場合です。

1.年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)
2. 同居の場合は収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満。別居の場合は収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

以上、所得税と社会保険それぞれの場合について説明しました。

遺族年金をもらっているという親と同居している、もしくは、生活費の仕送りをしているという場合には、その親の遺族年金以外の収入がどの程度なのか確認し、所得税の扶養親族にできるか検討するとよいでしょう。

たとえ健康保険で扶養にできなくても、所得税では扶養にすることは可能です。

また、その親の国民健康保険を支払っている場合には、社会保険料控除の対象にもなります。

親の面倒をきちんと見ているのであれば、所得税ではそれを考慮してくれています。