商標権 付随費用と減価償却
自社の商標を守るためには商標登録を行います。
商標登録をすることによって、その商標を独占的に利用することができ、
他社はその同一商標だけでなく、類似商標も使用することができなくなります。
この商標にかかった費用を、どのように処理すればいいのかを説明します。
商標権は無形固定資産として資産計上
1.原則
商標権は支払った時の経費にできません。
商標登録をするとその登録した商標を10年間独占的に使用でき、その商標登録に係った費用は、10年間にわたって効果を発揮します。
このことから、支払った時の費用にするのではなく、無形固定資産として認識して10年間で費用として計上します。
2.例外
商標登録の費用が少額であるときは、下記の取扱いが可能です。
金額 | 取扱い | |
原則 | 10万円未満 | 支出した事業年度の経費 |
10万円以上20万円未満 | 3年間で均等償却 (一括償却資産) | |
青色申告者である個人事業主または中小企業者 | 10万円以上30万円未満 | 支出した事業年度の経費 (少額減価償却資産の特例) |
減価償却の対象となる資産の取得価額に含めるべきもの、含めなくてよいもの
まず、商標権に関わらず減価償却の対象となる資産について見ていきます。
取得価額に含まれるものと含まれないものは以下の通りです。
1.含まれるもの
・引取運賃
・荷役費
・運送保険料
・購入手数料
・関税
・その他資産の購入のために要した費用
2.含めなくてよいもの
減価償却の取得に関連して支出した費用であっても、以下の様な費用は取得価額に算入しないことができます。
・不動産取得税又は自動車取得税
・特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
・新増設に係る事業所税
・登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
・建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
・一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額
商標権に係る費用のうち無形固定資産の取得価額に含めるべきもの、含めなくてよいもの
商標権の購入対価といえるのは、その商標にかかったデザイン料などの製作に掛かった費用でしょう。
上記の減価償却全般の場合を踏まえて、商標権の付随費用を考えた場合、特許事務所や特許庁へ支払うものは下記のものが挙げられます。
・商標調査費用
・出願印紙代
・登録手数料
・登録料
商標調査費用に関しては、「登録のために要する費用」とは言えません。
商標調査を終えて初めて登録が可能になるわけですから、商標調査費用に関しては付随費用として取得価額に含めるべきでしょう。
他の3つに関しては、「登録のために要する費用」という位置付けで、取得価額には含めずに、その支払時に経費とすることが可能です。
出願印紙代は、登録のための事後費用でよいのか疑義がありそうなところですが、印紙での納付というところから、租税公課として性質を鑑みて、取得価額に含めない処理をした場合でも是認されているのが実情のようです。
以上、商標権の処理方法について説明しました。
その他疑問点がございましたら、弊所まで相談いただけると幸いです。