コラム

外国法人へ支払う利子、配当、使用料 租税条約の確認を

外国法人との国をまたぐ取引を行う際は租税条約を確認しましょう。

大きな部分では、外国法人と取引をするときに、その取引で生じた利益は日本と外国のどちらで課税されるのかという問題が生じます。

両方で課税される二重課税の状態になってしまうのは問題です。

こういった問題を防ぐため、各国間で租税条約が締結されています。

租税条約は国内法に優先する

二国間の利害調整のために締結されているわけですから、租税条約は国内法よりも優先して適用されます。

租税条約よりも国内法が優先となるとそもそも利害調整できませんので、当たり前のような気もします。

源泉所得税で特に注意したいのが利子・配当・使用料(ロイヤリティー)

外国法人と取引をして対価を支払う時に特に注意したいのが源泉所得税です。

日本に支店などがない外国法人と取引をしたときは、利子・配当・使用料の支払時には源泉税がどうなるか意識することが必要です。

国内法ですと、源泉所得税の税率(復興所得税を含む)は、以下の通りです。

・利子:15.315%

・配当:20.42%

・使用料(ロイヤリティー):20.42%

これらの税率は、租税条約の適用を受けることにより、軽減又は免除を受けることができます。

シンガポールとの租税条約を例に出すと、定められている制限税率は以下の通りです。

・利子:10%(政府、中央銀行等の場合、免除)

・配当:15%(6月以上継続して議決権の25%以上を保有している株式の配当については5%)

・使用料(ロイヤリティー):10%

なお、この税率の適用を受けるには、租税条約の届出書の提出が必要です。

届出を忘れてしまった場合でも、納付した日から5年以内であれば還付請求が可能です。

使用料(ロイヤリティー)の定義についても租税条約で確認が必要

源泉徴収が必要な使用料(ロイヤリティー)に該当するかどうか、これは租税条約を締結している国ごとに定義に若干の差が生じます。

そのため、租税条約の確認が欠かせません。外国法人との取引が事業所得に該当する場合には、通常、源泉徴収の必要はありませんが、使用料(ロイヤリティー)に該当すると源泉徴収が必要になりますので注意しましょう。

租税条約の税率よりも国内法の税率のほうが有利な場合は国内法の税率で源泉徴収

租税条約で定めているのは制限税率です。つまり、その税率を超えて課税できません。国内法の税率が制限税率より低い場合には、国内法の税率を適用します。

制限税率が25%、国内法では20.42%ということであれば、源泉所得税は20.42%です。

手取り保証の契約となっている場合、自社の利益に直結するので注意

外国法人とコンサルティング契約を結び、ロイヤリティーを支払うとき、源泉税控除後の手取りを保証するという契約になっていることがあります。そのような場合、源泉税率がいくらになるかで自社の利益が異なるので要注意です。

100万円の手取り保証といった場合、国内法の税率20.42%で計算すると、報酬金額は以下の通りです。

・100万円÷(1-20.42%)=約125万円

しかしながら、租税条約の適用を前提とすると、シンガポール法人へのロイヤリティーの支払いであれば、報酬金額は以下の通りです。

・100万円÷(1-10%)=約111万円

結果、支払う報酬の金額にも影響を与えます。

以上のように、租税条約への対応は難しい局面が多いです。また、届出書の作成も難しく、国際税務に精通している税理士への依頼をお勧めいたします。