役員変更登記はお忘れなく
平成18年の会社法改正により、非公開会社の役員(取締役・監査役)の任期を、「最長で10年」まで延ばすことができるようになりました。
役員の任期が長めに設定されていると、任期満了に伴う役員の変更の登記の回数は減るので、手間やコストを抑えることができます。
今回は役員の任期、そして特に登記をし忘れた場合のメリット・デメリットについて説明します。
1.役員の変更登記
会社役員の変更登記には、次のような理由が挙げられます。
・就任
・退任
・辞任
・重任
・死亡
・解任
・欠格事由に該当
メリット・デメリットではないですが、気を付けたい点は、死亡や解任だけでなく、任期満了で同じ人間が再度役員に就任する場合(重任)でも登記が必要だという点です。
2.役員の任期
定款で特別に規定すれば非公開会社の場合、取締役も監査役も10年まで延ばすことができます。
こちらも冒頭で少しお話ししましたが、役員延長には以下の様なメリットとデメリットがあります。
○メリット
・任期満了に伴う変更登記の手間やコストを減らすことが可能です
・任期が長いので、長期的な視点で経営戦略を立て、実行できる可能性がある
○デメリット
・能力のない役員を長期間置かなければならなくなる可能性がある
→任期途中でも解任は可能ですが、解任に対して損害賠償請求されるリスクがあります。
また、「任期は役員になった日からちょうど○年後」(○は設定した年数)ではないので注意が必要です。
なぜならば、会社法では「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と定められているためです。
(上記の2年を最大10年まで延長できます)
具体例としては、以下の通りです。
・事業年度:4月1日から3月31日
・役員の任期:10年
・2017年4月1日から2018年3月31日の事業期間に対する定時株主総会の日:2018年6月26日
の会社で、2018年6月26日に取締役にAさんが選任されたとします。
この場合、2027年4月1日から2028年3月31日の事業期間に対する定時株主総会が終わった時がAさんの取締役終了の時です。
必ずしも「10年後ではありません」
3.役員変更の登記し忘れで起こり得ること
役員の変更登記は変更から2週間以内と期限が定められています。
これを怠ると裁判所から過料が課される可能性があります。
金額は遅滞の度合いで決まるとのことにも関わらず、何年も過ぎてからくることもあります。
数万円から数十万円の請求をされれば、役員の任期延長のコスト面でのメリットも薄くなってしまいます。
さらに、万が一12年間登記に変更がない場合、経営実態がないとみなされ「解散の登記」をされる恐れも生じます。
特に、平成26年度より毎年休眠会社の整理が行われるようになったので気を付けてください。
以上、役員の変更登記に関わる事項について説明しました。役員の任期を延長できるようになり10年以上たちましたが、平成18年以降に会社設立された方には、一回も役員変更登記をされたことのない方も多いのではないでしょうか。
特に任期を延長されている場合は、忘れずに変更登記をすることができるようチェックをお勧めいたします。