内部留保への課税で経済が活性化するか? 考えられる課税制度
昨日は留保金制度について説明しました。
本日は実際に内部留保への課税が賃上げや設備投資につながるのかを考えてみます。
特定同族会社の留保金課税制度をすべての会社に適用した場合
結論から申し上げますと、現状の内部留保課税である特定同族会社の留保金課税の適用対象を拡げたとしても、賃上げや設備投資にはつながらないと考えられます。
上記の制度の概要の通り、賃上げや設備投資をしたからといって、留保金課税が逃れられるかというと、そのような制度にはなっていません。
設備投資の実施は、その投資額が現金から資産へと変わるだけで内部留保であることには変わりないため、留保金課税の課税を逃れることはできません。
賃上げの場合は、決算対策として決算日直前に従業員へボーナスを支給すれば、利益が減少するため、利益に対する法人税等だけでなく留保金課税も減少します。
しかしながら、決算直前にボーナスを支給するのは現実的ではありません。
特定同族会社の留保金課税制度以外に考えられる方法
利益が出たから賃上げや設備投資をしようという時系列で考えると、賃上げをするのは利益が出た次の事業年度です。
賃上げや設備投資につながる内部留保課税は、下記の内部留保に対して課税します。
企業の利益-配当-法人税及び住民税-必要な内部留保(※)=課税対象となる留保金
※賃上げ予定額及び設備投資予定額を含む
なお、賃上げ予定額や設備投資予定額は以下の方法が考えられますが、いずれにしろ複雑で運用に疑問が残ります。
・自己申告した金額をとりあえず認め、金額に相違があれば、翌年度に調整
・賃上げ予定額や設備投資額の決定の仕方を法律で規定する
内部留保課税を所得税から考えた場合
この内部留保課税が所得税から考えた場合、個人の内部留保ということなので、預貯金や積立型の保険、投資信託の購入になるでしょう。
仮に、1000万円稼いで税金を100万円払ったとすると、手元に900万円残ります。
この900万円のうち老後の資金として100万円を定期預金に入れると、それは内部留保ということになり税金を払うことになってしまいます。
税率が10%であれば、10万円の税金を余分に払うことになるのです。
100万円で済むと思っていた所得税が、貯金したために10万円増えてしまったという事態が発生します。
以上の点から、企業側では内部留保課税については反対という声が多く、同時に賃上げや設備投資につながらないと考えられています。